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【世界女子選手権】日本の1次リーグ対戦国を分析  クロアチアはグループ首位最有力


いよいよ、12月1日からスペインで第25回世界女子選手権が開幕します。

2年前の熊本大会や、この夏の東京オリンピックの熱狂は記憶に新しいところですが、2024年のパリ・オリンピックに向けて、日本女子代表・おりひめジャパンは新体制でスタート。楠本繁生新監督のもと、この世界選手権に挑みます。

今回の世界選手権は、今年1月の世界男子選手権(エジプト)同様、出場国が24ヵ国から32ヵ国に拡大して行なわれ、これにともない大幅にレギュレーションが変更に。1次リーグは4ヵ国ずつに分かれて総当たりのリーグ戦で争われ、上位3ヵ国がメインラウンドへ。メインラウンド各4グループの上位2ヵ国、計8ヵ国が決勝トーナメントに進みます。

日本は1次リーグでグループGに入り、クロアチア、ブラジル、パラグアイの3ヵ国と対戦。今回はこの3ヵ国の戦力を分析していきます。

 

確実に勝点2がほしい初戦

 

日本の初戦(日本時間12月3日4:30スローオフ)の相手は、南米代表のパラグアイ。

パラグアイは、10月の南米予選で3位となり出場権を獲得(2大会ぶり4回目)。3位通過とはいえ、上位2ヵ国との差は大きいものでした。南米予選(リーグ戦)では、2位のアルゼンチンに13−29、優勝したブラジルに17−42と大敗。それでも残りの3試合を2勝1分でまとめてスペイン行きを決めました。

今回登録された21人のうち、ベテランGKアコスタ、センター・ファリアら5選手がスペインのチームに所属。ポストのフィオレも8年ほどブラジルで活躍していますが、そのほかの選手は国内のチームでプレー。前回大会、東京オリンピックも予選敗退しており、経験値はほかの3ヵ国よりも少ないのが現状です。

とはいえ、180cm超えのポストや170cm台後半の選手も多く、日本が苦手とする高さ、パワーを活かしたシンプルなプレーには注意したいところ。こうした部分を守ることができれば、日本の白星は近くなるでしょう。

前回出場した17年のドイツ大会に続いてパラグアイを率いるヴェラ監督は「3ヵ国はわれわれとは違うレベルにいるチームだが、その差を埋めようとトレーニングしている」と国際ハンドボール連盟(IHF)のホームページ内で語っています。

日本としては初めて世界選手権を戦うメンバーが多い中で迎える大事な初戦。上位3ヵ国が1次リーグを突破するため、グループの中で最も力が劣ると思われるこのパラグアイからしっかりと勝点2を得たいところ。勝てば1次リーグ突破がほぼ決まるため、2戦目からの戦い方にも影響する一戦になるでしょう。

 

世代交代真っ最中の元世界女王

 

第2戦の相手は13年のセルビア大会で初優勝を飾ったブラジル。スローオフは日本時間12月5日4:30。

近年、ブラジルと日本は接戦を繰り広げてきました。17年大会では初戦でぶつかり、白熱した試合は28−28の引き分け。日本はこれで流れに乗り、1次リーグを突破(当時は6ヵ国の総当たり戦で上位4ヵ国が決勝トーナメントへ)しましたが、ブラジルはまさかの1次リーグ敗退に。19年の熊本大会では対戦しませんでしたが、大会前のジャパンカップではブラジルが28−23で勝利しました。

今回のブラジルは世代交代の最中に大会を迎えることになります。10年以上、ブラジルの主力として活躍してきたアモリムが、東京オリンピック後に代表引退を宣言。200試合以上ブラジル代表のユニフォームを着てきた攻守の要、精神的な支柱が抜ける穴は大きく、埋めるのは容易ではありません。

登録メンバーに入っている35歳のGKアレンハルチ、34歳のホドリゲスら、13年優勝メンバーが健在で、頼もしいものの、30歳を超えて体力の衰えも見えてきています。

その分、期待がかかるのは若手、中堅選手たち。フランスの強豪メスでプレーするデ・パウラ(25歳、センター)、183cmの大型ポスト、T・アラウジョ(27歳)らが、どれだけ先頭に立ってチームを引っ張れるかで今大会の結果が変わってくるでしょう。

さらにビトロ、デ・アルダの22歳コンビもメンバー入りする可能性もあり、新しいブラジルが見られるかもしれません。

13年大会で世界の頂点に立って以降、15年大会は10位、17年大会は18位、19年大会は17位(いずれも24ヵ国中)と低空飛行が続いています。東京オリンピックにも出場しましたが、11位(12ヵ国中)と振るいませんでした。とはいえ、ロシア(ロシア・オリンピック委員会として出場)に引き分け、ハンガリーに勝利するなど、好不調の波は激しいものの、いまだに世界トップクラスの力があります。

日本としてはいかにブラジルをペースに乗せないで戦うかがポイントになります。

1次リーグ突破とともに、メインラウンドにつながる戦いとしても重要なゲームになるでしょう。

ブラジルの次代を担うデ・パウラ

 

クロアチアは大会屈指のダークホース

 

1次リーグ最終戦(日本時間12月7日4:30スローオフ)で戦うクロアチアは、出場自体は11年大会以来5大会ぶりで、最高成績も6位(1997年大会)ですが、今大会は初のメダル獲得に期待がかかるダークホースの一角です。

20年12月に行なわれたヨーロッパ女子選手権(ユーロ)でクロアチアは銅メダルを手にしました。この大会では世界女王オランダなどを破り、準決勝に進出。フランスに敗れ決勝行きは逃したものの、3位決定戦でデンマークを25−19で下して初の3位に入り、一気に注目を集めました。

しかし、22年のユーロ予選(10月)では、ホームで格下のウクライナに22−23とまさかの黒星。8度も2分間退場を誘い、数的有利の時間が圧倒的に多かったにも関わらず、後半に逆転を許し敗れました。3日後のチェコとのアウェイゲームは26−24で勝利したものの、不安を残しました。

大会直前にはスロベニアを招いて親善試合を2試合行ない、28−24、29−21と2連勝。悪い流れを止めて、いい形で最終調整を終えました。大きなケガもなく、ベストメンバーで臨めるでしょう。

その中で注目は、エースのミチエヴィッチとポストのデべリッチの2人。

フランスのメスに籍を置く27歳のミチエヴィッチは、ユーロでチームトップの35得点を記録(全体3位タイ)。その最大の特徴は、195cmの長身から繰り出されるロングシュート。女子界屈指の高さから放たれるシュートは、世界トップクラスの力があります。彼女を打たせるための戦術も豊富で、左バックの位置からでなく、中央に回って打ち込むことも。どのチームも彼女のシュートには手を焼くでしょう。

そしてそのミチエヴィッチに打たせないようにと、DFが前に出てできたスペースを使うのがポストのデべリッチ。2人のコンビネーションで得点を奪うのがクロアチアの得点パターンの1つです。DFにつかまれても振り切れるパワーがある27歳のデべリッチは、アーク(6mのカーブ部分)からのシュートがうまいのも特徴。ユーロではライン際で存在感を放ち、オールスターチーム(ベスト7)に選ばれました。今夏からヨーロッパ女王クリスチャンサン(ノルウェー)の一員となり、充実したシーズンを送っています。

どちらも所属チームでは主軸として活躍中で、ヨーロッパチャンピオンズリーグにも出場するなど国際経験も豊富。クロアチアの中心選手であることは間違いありません。

この2人以外にも旧ユーゴスラビアらしくテクニカルな選手が多く、このグループのトップ通過最有力候補でしょう。

日本はこの時点で1次リーグ突破を決めておければ、クロアチアに全力で挑戦することができます。クロアチアは強敵ではありますが、前述のように格下のウクライナに敗れるなど、不安定な部分も。

 

メインラウンドに進むと、1次リーグの成績を持ち越すため、気が抜けない試合が続きます。上位をめざすならなおさら、1つひとつの試合、プレーが大事になってきます。

新体制で迎える世界選手権。新生おりひめジャパンはこの3ヵ国に対してどのような戦いを披露するでしょうか。

今大会は男子の世界選手権同様、IHFのYouTubeチャンネルでライブ配信される予定です。ぜひ画面の向こうで戦うおりひめたちを応援してください。

日本のメンバーはこちらから。

 

【日本の試合日程】

・1次リーグ
12月3日4:30〜 対パラグアイ 配信先
12月5日4:30〜 対ブラジル 配信先
12月7日4:30〜 対クロアチア 配信先
※すべて日本時間