【vol.5、14年2月号】ソウル五輪・開催国の成功に学ぶ
ジュニアチームを代表にした
強化については、ソウル・オリンピックまでにどのような準備がなされたのか?
「84年のロサンゼルス・オリンピックが終わったあと、私たちはジュニアチームを代表扱いすることにしました。ジュニアの選手をナショナルとして海外にも遠征させ、4年間強化を続けました。
その強化を進めるためにも85年に世界女子ジュニア選手権をソウルに招致できたのは、大きな要素でした。当時、本来ならば代表で戦えたはずの年令の選手には我慢してもらい、かわいそうなことをしましたが、世界ジュニアがあったことで、大義ができ、その方針を押しとおすことができました。また、その大義のために所属チームにも我慢してもらえました。
女子では、年令的に高校からも実業団からも代表のために選手を出してもらうことになり、オリンピックのためにという大義で、学校の授業内容を選手村で行なうこともありました。
日本も東京オリンピック時に27、28才になる選手を筆頭にしたチームを今から作ることがポイントになるでしょう」
男子はカタールが強い
─現状のアジア、また世界のハンドボール情勢をどう見ているか?
「男子では、ヨーロッパ勢にチュニジアなどのアフリカ勢が食い込んできています。
アジアではカタールが強い。カタールの代表はフランスやアフリカからの帰化選手ばかりで、対抗するべき韓国や日本もなかなか厳しい状況です。
女子は世界選手権(13年、セルビア)が終わったばかりですが、ブラジルの躍進には正直驚きました。
とくにGKに、シュート阻止率40%以上のアレンハートがいて、彼女が優勝への原動力となりました。リオデジャネイロ・オリンピックの金メダルは今回の3位まで(ブラジル、セルビア、デンマーク)が最有力、ブラジルのGKに対する研究もこれからの各国のポイントになるでしょう。
4位ポーランドも可能性を残しますし、可能性という点では速攻に強みのあるノルウェー(今大会5位)も高く評価しています。
ブラジルの躍進はリオ・オリンピック招致抜きでは語れません。日本も参考になるのではないでしょうか」
─戦術面ではどうか?
「88年のソウル・オリンピックで韓国男子は銀メダルを取ることができましたが、その時の韓国は得点の30%を速攻で取っていて、それが武器となっていました。女子も同じです。
ところが現在はヨーロッパ勢がそれ以上の割合の得点率で速攻を仕掛けてきます。それでいて60分間走り抜くだけの体力をつけているのです。
そうなると体格で負ける分、アジア勢は厳しくなります」