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【vol.6、14年3月号】ブラジルの先導に続け


「オリンピック」への心配

IHFの心配は、すべて「オリンピック」へつながっている。正式競技としての採用は、厳しく細かいまでの減点法で左右される。

現代でオリンピックから外されるのは致命的なダメージとなる。例えば、財政面では国際オリンピック委員会(IOC)からの分配金額が極端に違う。

IHFへの査定(13年5月)は5ランクのうち4番目だが、それでも1100万ユーロ(約15億円)を受け取る。その安泰のためには、ハンドボールが「世界のスポーツ」であり続けなくてはならない。

IHFが顔を曇らせたのは皮肉にも2年前のブラジルだった。2011年の第20回世界女子選手権の開催を引き受けたブラジルは、大会まで1年を切った時点で複数の会場が変更されるなど運営上の手違いが続き盛り上がらず、日本の善戦が話題を呼んだデンマーク戦は決勝トーナメントながら「観衆500」、実数は300人程度とされ、決勝戦も4000人を割り、大会通算65750人、1試合平均747人の低調で終わった。

観客数未発表の第19回大会(09年・中国)も活況とは言えなかったが、ブラジル大会はそれを下回った。

リオ・オリンピックまで、その時点で4年8ヵ月。ブラジルの戦力と合わせ、IHFは前途に陰りがのぞくのを意識させられた。

 

詰めたいヨーロッパとの差

国際ハンドボール界にとって96年のアメリカ(アトランタ)から連続してオリンピック開催国での普及が充分ではなく、気のもめる要因の1つになっていた。

00年オーストラリア(シドニー)、04年ギリシャ(アテネ)、08年中国(北京)、12年イギリス(ロンドン)、そしてブラジル(リオ)。

アトランタもシドニーもロンドンも代表チームを組むだけの競技者を揃え切れず、ほかのスポーツからトライアウトで補強する苦肉の状況が伝えられた。

第2次大戦後、復活したオリンピックでハンドボール(当時は11人制)がなかなか採用にこぎつけられなかったのは、48年のイギリスに始まってフィンランド、オーストラリア、イタリア、日本(64年、東京)、メキシコと続いた開催国でフィンランド、日本以外は国内協会が充分に組織されておらず、ハンデとなったからだ。

今やIHF加盟国(地域を含む)は199。課題は量と質のバランスだ。とりわけ伝統のヨーロッパ圏にほかの大陸勢がどこまで“その差”を詰めていくか。韓国の躍進以来、しばらく途絶えていた動きがブラジルによって新たなページが開かれた。

IHF幹部の握手には栄冠への祝福より今後への期待を込めた力が強かったのではなかろうか。

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