FILE1 “現代最高の司令塔” イバノ・バリッチ (クロアチア代表)
IVANO BALIC
PERSONAL DATA
生年月日/ 1979年4月1日 25才(2005年3月20日現在)
身長・体重/ 189p・91s
ポジション/ センター
所属クラブ/ ポートランド・サンアントニオ(スペイン)
公式国際試合/ 88試合出場 273得点
第19回世界男子選手権での個人成績
10試合438分出場 46点(11位) シュート成功率60% 46アシスト(3位)
大会MVP&ベスト7受賞
第1回は、大会MVPに敬意を表して、イバノ・バリッチを取り上げたい。
準優勝したクロアチア代表のセンターで、“現代最高の司令塔”と言われるプレーヤーだ。
クロアチア人記者に聞いたところでは、今シーズンは足首のケガに悩まされているという。その影響もあり、今大会は本来のデキではなかったのだが、それでも大会最優秀選手に選ばれるのだから、さすがだ。
前回大会、アテネ五輪に続くビッグタイトル3連覇の偉業は逃したが、クロアチアは間違いなく現代最強のチーム。その攻撃のタクトを握るのがバリッチだ。クロアチアのセットOFはすべて彼の手から始まる。
センターでボールを持つと、相手の陣容を観察、瞬時に最良の攻撃方法を選択する。
基本的なプレーはいたってシンプルだ。クロスに打たせ、それがダメならば、サイドに散らす、流れの中で、ポストが空けば、すかさずパスを落とす。隙あらば、ステップシュートやカットインで自らが狙う。彼のゲームメイクは、基本に忠実。センタープレーヤーのお手本と言っても良いだろう。
シンプルだが、精度が抜群に高い。それは、クロアチアの全選手(とくにスタメンの7人)に共通している。彼らを王者へと押し上げた要因の1つだ。相手はどう攻めてくるかわかっていても止められない。
スター揃いのチームの中でも、バリッチのプレーはひと際目立つ。個人技に魅了されるのだ。
例えば、準決勝・フランス戦のプレーが印象的だ。カットインで2枚のDFの間に割って入ったバリッチ。DFにつかまえられ、ファウルの笛が吹かれるかと思われた寸前、DFの股の間を抜けるノールックパスをポストに通して、7mTを獲得した。
外見は力があるように見えないのだが、実は馬力がある。DFにつかまれても、プレーが終わらない。逆にそのブラインドを利用して、ステップシュートを叩き込んだり、例のように観客を驚かせるパスを繰り出してくるのだから、DFとしては厄介だ。
そして、バリッチをバリッチたらしめているのは、彼が持つ独特の“間”である。
本誌4月号のコラムの中で、宮崎選手が「緩急のつけ方がうまい。同じセンタープレーヤーとして参考になる」と書いていたように、ゆっくりとボール回しをしているかと思えば、突如としてステップシュートを打ったりする。そのテンポアップに相手はついていけない。
DFとの間に絶妙な“間合い”を保てるのも彼の良さ。一瞬で加速できるカットインもあるし、ポストへのキラーパスもある。だから、DFがうかつに当たりにいけない。その距離感を作れることが、彼の強みであり、“世界最高の司令塔”と呼ばれるゆえんだろう。
このあたりの能力は、天性のものなのかもしれない。感覚による所が大きいので、他の選手が真似をするのはなかなか難しいかもしれないが、宮崎選手が言うように、日本のセンタープレーヤーにも参考になる部分も多いだろう。
現在25才、絶頂期はこれからだ。今後の活躍次第では、現代のみならず、“史上最高の司令塔”になるだけの可能性を持ったスーパースターである。