WORLD STARS

 











FILE1 イバノ・バリッチ(クロアチア)


FILE2   “サイドの職人”     ホアン・ガルシア (スペイン代表)

     JUAN GARCIA

 PERSONAL DATA
 生年月日/ 1977年8月28日 27才(2005年4月20日現在)
 身長・体重/ 176p・75s
 ポジション/ 左サイド
 所属クラブ/ アデマール・レオン(スペイン)
 公式国際試合/ 63試合出場 245得点
 第19回世界男子選手権での個人成績
   10試合498分出場 55点(6位) シュート成功率75% 

 
 第2回は、優勝したスペインの左サイド、ホアン・ガルシアを紹介する。
 
 本誌でも書いたが、初の頂点に立ったスペインの優勝要因は“層の厚さ”だった。
 同じようなレベルを持った選手が次々とコートに立つことで、60分間通しての高速展開を可能にしたのだ。
 
 ゆうに2チームは作れるような層の厚さを誇ったスペインの中にあって、唯一“アンタッチャブル”なポジションだったのが左サイド。それは出場時間を見れば一目瞭然だ。
 
 スペインのメンバー1人あたりの平均総出場時間は262分(10試合)だが、ガルシアは498分出場でチーム一の出場時間を誇る。彼の控えダビスは100分だから、ガルシアの重用度は明白である。
 
 準決勝では58分出場、決勝ではチーム唯一のフルタイム出場と、スペイン・パストル監督にとって重要な場面では他に代えの利かない選手であったことがわかる。
 
 平均身長192p、平均体重95sと大会屈指の大型チーム・スペインにあって、チーム最低身長、最低体重のガルシアが最重要視されていたのは面白いデータだ。
 
 では、なぜ、彼が重用されたのか。それは、調子に波がない安定した選手だからだ。
 
 大会通算55得点はチーム最多だが、賞賛されるのは75%という高いシューート成功率。サイドシュート、速攻、さらには7mTのスローアーも担っていたが、確実に結果を出した。自分の与えられた役割をよく理解し、それを確実にこなす。

 決してあっと驚くようなスーパープレーをするわけではない。12点を決めた速攻も、爆発的なスピードがあるわけではなく、速攻に出るタイミングの良さ、判断力の良さでフリーになるタイプだ。サイドシュートは相手のGKの動きをよく見て、スピンなども駆使して、しっかりと決める。思わず「巧い」とうなってしまう“職人気質”のプレーヤーだ。

 彼がその能力を最大限に発揮したのが決勝戦。13本中11本のシュートを決める持ち前の確実性で、優勝に大きく貢献した。
 ただし、それでも特別に目立つわけではないのが、職人らしい。本当ならば11点もとれば、ヒーローとなるのだが、見ているこちらからすると「あれっ、そんなに点を取ったっけ」という感じだ。黙々と仕事をこなして、得点を積み上げていった。

 “職人”気質の選手は、地味なプレーヤーと思われがちだ。だが、監督にとって、これほど頼もしい、使いやすい選手はいないだろう。

 その日の調子によって、大爆発もあれば不発に終わるときもある選手の方が一般のファンには魅力的であるかもしれない。しかし、「勝利」をつねに求められる立場にある監督にとっては彼のように、いつでも安定した力を発揮してくれる選手の方が価値を持つ。それは、先ほどあげた数字にもしっかりとあらわれている。

 世界のハンドボールを見るとき、私たちは2m近い大型選手が豪快なロングシュートをたたき込むシーンに目を奪われやすい。しかし、その一方で、ガルシアのように自らの仕事を淡々とこなす“職人”プレーヤーの働きにも是非、注目してもらいたい。