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FILE1 イバノ・バリッチ(クロアチア)  FILE2 ホアン・ガルシア(スペイン)


FILE3   “カリスマ”GK     ブラド・ショラ (クロアチア代表)

                         
        VLADO SOLA

 PERSONAL DATA
 生年月日/ 1968年11月17日 36才(2005年4月30日現在)
 身長・体重/ 194p・94s
 ポジション/ GK
 所属クラブ/ ベスプレム(ハンガリー)
 公式国際試合/ 118試合出場 
 第19回世界男子選手権での個人成績
   10試合505分出場 シュートセーブ率33%(20位) 


 世界選手権のような高レベルの大会で、実力が接近したチーム同士が対戦した場合には、GKのデキが勝敗に直結することが多い。今大会も、チームを救う神業を連発、まさに“守護神”という名がふさわしい好GKがたくさん存在した。

 ベスト7に選ばれたステルビク(セルビア・モンテネグロ)、優勝したスペインのバルフェ&オンブラドスのコンビ、クロアチアからの金星獲得の立役者となったエッゲ(ノルウェー)、躍進チュニジアを最後尾で支えたマガイズ。スウェーデンのベテラン、T・スベンソンも健在だった。


 彼らはみな“存在感”にあふれていたが、今大会、私が最も印象に残ったGKは、クロアチアのブラド・ショラだ。

 今大会のシュートセーブ率33%は全体の20位。突出した成績を残したわけではないが、そうした数字では表せない独特の“オーラ”を放っていた。

 『ここぞ』という所では必ず止める。じつに勝負強い。 “熊”のような体型といったら失礼だが、194p、94sの体は一見すると動きが鈍そうだ。しかし、勝負所でのキーピングは猫のように俊敏である。

 彼のプレーから感じる “勝負強さ”はクロアチアというチームを語る上でも1つのキーワードになる。「現代最強」と呼ばれるクロアチアは、相手を粉砕するというほどの戦いを見せるわけではない。多くのチームが試合途中までは競り合える。予選リーグで戦った日本も前半は互角の戦いができた。

 それでも、最後には、いつもクロアチアが勝っているのは、勝負所と見ると一気にペースを上げることができるからだ。
本当に大事な時間帯を全員がよく知っている。日本の選手も「それまで競り合いをしていたのに、気づいたら差が開いていた感じ」と言っていたが、『ここ』という所を見極め、ギアをトップに入れるタイミングが絶妙なのだ。

 その合図とも言えるのがショラのキーピングだ。彼の好守連発から速攻が飛び出すようになるとクロアチアの時間。一気に得点ペースがあがり、気づけば、安全圏に突入している。詳しいデータがあるわけではないが、こうした時間帯のショラのセーブ率はグンと上がっているはずだ。

 ショラが止めるとチームに勢いが出る。本人もそれをわかっているのだろう、派手なガッツポーズを連発して、ムードを盛り上げる。逆に言えば、彼がまったく当たらない時はクロアチアのペースは上がらない。今大会の決勝戦が象徴的だ。この試合のセーブ率はわずかに20%。スペインに40得点を許し、チームは敗れた。

 この決勝戦はチームにとってのショラの重要度が分かる試合でもあった。当然、サポーターからの人気、信頼も抜群で、試合中は「ショラ! ショラ!」の声が鳴り響いていた。ファンを惹き付けるのはそのセービングばかりではない。アテネ五輪出場時には、赤く染め上げられていた髪の毛は、今大会は鮮やかな金。クロアチア国内では、彼の髪型は「ショラカット」と呼ばれ、マネをするファンも多いと聞く。
 
 プレーだけでなく、ファッションでも人を魅了できるのはプロフェッショナルである証拠だと思う。言葉や数字では表せない独特の魅力=カリスマを持った彼のような選手の存在が、ハンドボール観戦をよりいっそう楽しくさせる。